きとろの徒然日記

観たお芝居、旅行のことと食べたこと

【観劇】モンスター・コールズ

2024年2月12日(Mon)マチネ@Parco劇場(K列)

モンスター・コールズ

 

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あらすじ

コナー・オマリー、13歳。窓からイチイの木が見える家で、母親との二人暮らし。
だが、母親は闘病中で、そのために、コナーとは気の合わないおばあちゃんが、世話に来てくれている。
父親は、アメリカに新しい家族を作って出ていった。学校では、母親の病気がもとで、いじめられている。
唯一コナーを気遣う幼なじみのリリーとも不仲になり、孤立している。
それは、夜中過ぎにやって来た。モンスターがコナーの前に現れ語る。
「これから三つの物語を聞かせる、
私がその三つの物語を語り終えた時、お前が四つ目の物語を私に聞かせるのだ。
そして、それはコナーが隠している真実でなければならない。
お前は真実を語る、そのために、お前は私を呼び出したのだ。」と。
投薬を変えても病状が良くならない母親。ついには、入院することになり、コナーはおばあちゃんの家に預けられる。
時計が12時7分になる。闇の中で待つモンスターが最初の物語を語る。
エスカレートするいじめ、学校の先生からも腫れ物に触るように扱われている。
急きょ、アメリカから帰国する父親。日に日に悪化する母の病状。
時計が12時7分を指すとき、第二、第三の物語が語られる。
そして、コナーは、四つ目の真実の物語を語ることが出来るのだろうか?
12時7分には、どんな意味があるのだろうか?

 

 

 

というわけでPARCO劇場です。

今年のPARCO劇場のラインナップが私的にかなり魅力的で、積極的に渋谷に出掛けることになりそうです。まぁ仕事次第ではありますが……

 

出演されている瀬奈じゅんさんと葛山信吾さんといえば、大好きな舞台、ビューティフル・サンディに出演されていたお二人で、しかも今回は(元)夫婦役!とても楽しみにしていました。

 

元々は児童小説であり映画化されてもいるとのこと(未読未視聴)。

舞台の両側には椅子が奥に向かって等間隔に並べられていてそこに登場人物が並んでいて、服やカバン、朝食を差し出す役目を担い、コナーは彼ら彼女らが舞台上に落としていく服を身に着けていくというのが新鮮でした。登場人物でもあり黒子でもあるんですね。

エアリアル(という説明があったのですが、ヨガのエアリアルとは違いロープを使った演出)がとても効果的で、ロープの影がイチイの木に代わり、コナーを追いかける怪物を表し、怪物を隠しているのも人の手によって形が変えられるのが観ていて次はどうなるのかとワクワク。しかし舞台両脇の梯子を登ったり降りたりする山内さんは大変だっただろうなぁ。

 

怪物が聞かせる物語は人の心情や義理人情に寄らずあくまでも起こった事象を客観視した上で平等に伝えられる。語られる物語に意味はない理不尽だと感じていたコナーのもとに怪物を呼び出した理由が隠されていてそれをコナー自身は気づかないところが13歳という年齢や置かれた状況の不安定さを表しているのかなと思ったり。

そして、3番目の物語で、治るということの半分は信じることが占めると伝えられる。

それがコナーの物語の伏線で、母の病気が治るということを信じられなかったのに信じたくて、助けたいと願うと同時にもう終わらせたいと願ったコナーに呼ばれて出てきた怪物だったと。

きっとコナーが心の底から信じても母は助からなかっただろうと思うけれど、信じていれば怪物は出てこなかったはず。

父が執拗に繰り返す勇気を出すということ、祖母が言う話し合うことと怪物が伝える真実を話すことはイコールだと思った。

葛山さんは本当にこういうちょっと頼りなさげで、でも人に諦めずに伝えようとする役どころがお上手ですね。

 

真実を話したコナーに怪物は優しく、古い掛け時計や、デジタル時計等で示される12時7分は、最後はまさに息を引き取ろうとする母親の病室で迎え、怪物はそれをじっと見つめながら終幕。

心電図の音が時を刻む音のようで、もう目も開かないのに震えながらそっとコナーの元に手を伸ばす瀬奈じゅんさんの美しさよ!

 

最後、ハッピーエンドでないところも良かったです。

どうしても児童小説というとハッピーエンドエバーアフターが望まれるように思いますがこういうビターエンドも素敵だな…と大人になった今だからこそ思う。

でも私が子どもの時に読んでいたらめちゃくちゃ落ち込んだだろうな、ルーマー・ゴッデンの人形の家の結末でブチ切れる子どもだったので……