きとろの徒然日記

観たお芝居、旅行のことと食べたこと

【観劇】あのよこのよ

2024年4月15日(Sun)@PARCO劇場(P列)

あのよこのよ

 

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※若干のネタバレがあります。

 

あのよこのよ、は令和に対する風刺の物語でした。

池谷のぶえさん、村木仁さん、市川しんぺーさんが出てるとなれば行かずにはいられないでしょ!と出かけてきましたPARCO劇場

 

エレベーターを待っていると何だか目立つ帽子とジャケットの男性が…古田新太さんでした。

村木さんは言わずもがなですが、主演の安田さんとはマニアックで共演されていますし、のぶえさんとも獣道一直線でご一緒されていたはず。

独特なファッションと雰囲気相まって他のお客さんもヒソヒソ…笑

 

開演前は幕が下りた状態だったのですが、それが地獄絵図のような絵で

 

江戸から明治への黎明期に、刺爪秋斎(安田さん)は明治政府を批判した浮世絵を描いたことで牢屋に入れられ拷問されていたのですが、出所し、弟の簪職人である喜三郎と居酒屋にいたところに未来が見えるというフサ(池谷のぶえさん)に「おんなが見える」と告げられたところから物語が始まります。

 

人の死と時代の変化に焦点を当てた作品で、ちょっとダークなものの見方が演出の青木豪さんとタッグを組んでいた前作「マニアック」と通じるところがありました。

以前は良かったことが時代の変化によってダメになったり、死の概念について考えさせられたり…まさに今の令和の時代に似通った部分があって主人公に共感できるところも多かったです。

主演の安田さんは以前大病を患われた上に怪我をされたとのことでしたので激しい殺陣やお芝居にドキドキしてしまいましたが、今回の舞台では殺陣のシーンも多く、場面展開ではさすがの歌唱力でさすがだなぁと感嘆してしまいました。観客の意識を向けさせることもお上手で。

 

秋斎は、徳川慶喜公の側室であり彼が隠し持っていた薬を盗んで売るつもりだという危ない橋を渡っているミツとその恋人をアメリカの取引先まで送り届けるという本筋の中で、その道中に襲い来る敵を倒していきながら自らが捕まった原因である描く浮世絵のモチーフやなぜ浮世絵師になったのかを思い出していく。

主人公である秋斎もちょっと危ない人間なんですよね。道端で死に、腐っていく人間の肉を見て、恍惚とする人間で、しかもそれを出会って間もないミツに話してしまうところとか。襲い掛かってくる人間は斬り倒すしそりゃ新しい時代には追い付かないという。でもこれが我々が新たな価値観に振り回されていることを暗示しているのかなと思いました。

 

市川しんぺーさんが演じられたフサの父親である幽霊の役は物語の中でも、見える人と見えない人がいることではっきりと観客にも幽霊であると伝えられるのですが、序盤に死んでいたのにずっと生きているように登場していたミツが自分はずっと生きていると認識していたが故に本当は持っているはずもない(死んでいるので)行李を持ち続け、本物の行李が出てきた時にはそれをなくしてしまうという演出が面白かったです。

後から思い出せば、幽霊が見えない人間はミツが出てきた時にはその場にいませんでした。

見える人間にはその人が生きているか死んでいるか分からず、死んでいる人間は自分が死んでいると認識していないので生きている人間として振る舞う。

では、死とは何か。

死の概念としては私の理解不足ではっきり捉えることができなかったのですが、

死とは、自らが死んでいると認識した時に初めて死が成立する。ということは認識次第で"あのよ"が"このよ"になり、”このよ”が”あのよ”になり、”あのよ”が”このよ”になる…ということ??

 

物語として今観れたことが良かったと思います。これがもう少し先、もしくは後だったらここまで共感しなかったと思うので…